消すことのできない過去の罪への償いと、いまだ罰されぬ悪人への怒りに引き裂かれるギャンブラーの“復讐と贖罪”を描いた傑作スリラー『カード・カウンター』より本編映像が解禁された。
名作『タクシードライバー』(76)から45年。マーティン・スコセッシ(製作総指揮)とポール・シュレイダー(監督・脚本)が再びタッグを組み、矛盾と怒りに満ちた現代社会を描き出した本作は、第78回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、多くの批評家が2021年のベストリストに選出した。ミステリアスな主⼈公を⾊気たっぷりに演じ「全キャリア中で最高の演技」との評価も高いオスカー・アイザックをはじめ、脇を固めるティファニー・ハディッシュ、タイ・シェリダン、ウィレム・デフォーも強い印象を残す。
解禁された本編映像は、レストランでカークにポーカーで最高の手を問われ、オスカー・アイザック演じる主人公テルが2012年のアイオワ州で見たポーカーの手を再現するシーン。カークに大会の出場者を説明しながらトランプを扇状に広げ、美しいターンオーバーを披露。さらに裏返しの状態からまるでマジシャンのようにカードを言い当てながら引き、カークに「どうやった?」と問われ「練習だ。時間だけはあった」と事も無げに答える様子は熟練のポーカープレイヤーの風格を漂わせている。
■『カード・カウンター』本編映像
ギャンブル・ブローカーのラ・リンダを演じるティファニー・ハディッシュは、本編の随所で巧みなカードさばきを見せるオスカー・アイザックにどこでカードを学んだのかを尋ねたが、彼の返答は「人から見て学んだ」とそっけなく、観察力を要するポーカープレイヤーの素質があったことが伺える。鑑賞時には、彼の巧みなカードさばきにもぜひご注目いただきたい。
今回、初めてシュレイダー監督作品への参加となったオスカー・アイザックだが、実は前作『魂のゆくえ』のトラー牧師役にオスカー・アイザックも想定していたと明かしたシュレイダー監督。しかし設定年齢からイーサン・ホークがぴったりだという結論に至りアイザックの出演は叶わなかったそう。「それでもオスカーのことを考えるのをやめたことはない。彼はいつも私の映画の登場人物にしたい俳優なんだ」「『カード・カウンター』の構想を考え始めた時には、すぐにアイザックのことを考えた」と語っている。
一方で、アイザックも何年もシュレイダー監督と仕事をすることを望んでおり、本作の主役のオファーを受けた際、翌日すぐに快諾したという。「彼の創作する登場人物の個性は強く、忘れることができない。本作でそれを体現できるチャンスをもらえたことをとても喜んでいる」と熱く語っている。
6/16(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほかにて全国順次公開