悪い男

凄みを湛えた眼差しの男が、人ごみを彷徨っている。男は売春街を仕切るヤクザのドン、ハンギだ。彼の目には、ベンチに腰掛ける一人の女性の姿が映った。膝にのせた“西洋美術史”の教科書と足元の白いサンダルが眩しい女子大生、キム･ソナだ。ハンギはソナの隣に腰を下ろすが、無視されてしまう。しかし、ハンギは強引にソナの唇を奪い街頭はパニックに陥ってしまう。軍人に捕らえられたハンギに対しソナは、「最低な奴」と唾を吐きかけ、怒りをあちわにするのであった。ある日、ソナは書店で大金の入った財布を拾い、思わず中味を抜き取ってしまう。財布の持ち主に捕まったソナは、元々は桁外れな金額が入っていたはずだと言われ、高利貸しから借金をするはめになった。その契約書には「返済できない場合には身体に対する権利を放棄する」と書かれていた。ソナはハンギの陰謀にはまり、娼婦として彼の仕切る売春宿に売り飛ばされてしまうのだった。恥辱と恐怖におびえ、やつれていくソナ。それを見るハンギは自責の念にかられていく。ハンギの子分ミョンスがソナに惚れてしまい、お金を払って関係を持つ。情事のあと、ミョンスは思わず口を滑らし、ハンギの策略でここに連れて来られたことを知る。そんな頃、ハンギは宿敵ダルス派の襲撃を受け、子分ジョンテはダルスを殺す。ところがハンギは、死刑になることを知りつつもジョンテの代わりに出頭し、刑務所に送られるのだった。憎んでいたはずのハンギが死刑になると聞いて、ソナはジョンテとともに、刑務所へ面会に訪れる。死刑囚となったハンギを前にし、「勝手に死ぬの? 私をこんなにして…」とソナは絶叫するのであった。